Ca’ d’Oro 2018Back

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◯ Overview

落胆の心を忘れるほどの心揺さぶられる瞬間。

それは朝の9時半。
町を出る電車に乗り込む前に駆け込みで訪れたカ・ドーロ宮。
二階のアルコーヴの一角に飾られたマンテーニャの作品に会うための訪問だった。

たどり着くと受付のお姉さんが、一階と二階で開館の時間は違うと言う。
一階は9時からで二階は10時から。
電車の時間を考えると二階を観るのは諦めるしかなかった。
二階にあるマンテーニャを見に来たにもかかわらず。

その落ち込む気持ちで踏み込んだ一階の広間で、想像もしていなかった美しさに絶句した。
一面のモザイクに囲まれた空間で、窓から差し込む水面の反射と風にさらわれキラキラと揺れ動く光たち。
何色とも言い表せない暖かいゴシック美術の空気に包まれる。
ヴェネツィアは夢のように美しいものばかりだったけど、5日目にしてその際たるに出会ったと確信した。

そしてより二階への期待と憧れはさらに募る結果ともなる。

旅にはときどき「後悔」という悲しい気持ちがセットでついてくる。
そしてこの気持ちがまたこの同じ町に私を連れてきてもくれる。
だから「後悔」は一概に悪者ではない。
2回目に訪れたときには1回目の「後悔」に感謝さえするから。

また絶対にこの美しいカ・ドーロを訪ねたい。
そして次こそは必ず上に向かう階段を登りたい。

そう強く心に刻みながらカ・ドーロを後にし、パドヴァ の町へと向かう電車へと急いだ。